遠隔臨場をスマートグラスでやってみてわかったこと
遠隔臨場で利用されているAtlasDirection、ウェアラブル端末
Atlasの遠隔支援は、国交省が策定した2020年度版の遠隔臨場試行方針にも対応しているシステムで、九州・中国・四国・関東地方を中心に既に30弱の現場で利用頂いております。
ここ数カ月で全国からの問い合わせも多く頂いており、遠隔臨場はまさにこれからということがわかります。
実際に使ってみてわかったこと
Atlasは以前より建設現場の安全パトロール等でご利用頂いておりましたが、この夏からは遠隔臨場の用途でもたくさん利用頂けるようになりました。
この夏に実際に使ってもらった遠隔臨場の現場の声から、Atlasとスマートグラスで遠隔臨場を実施するメリットをいくつかご紹介していければと思います。
スマートグラスを利用することのメリット
映像を見ながら危険を回避できる
AtlasはMoverioやVuzixといった両眼タイプや単眼タイプのスマートグラス(ウェアラブル端末)に対応しております。
現在多くの現場ではMoverioを利用して頂いております。
Moverioは両眼タイプで、グラスを掛けている作業者さんの目の前に映像が大きく表示できるタイプとなります。
両眼タイプを利用する際に、 グラス内の映像が邪魔で現場で利用できるのか? と危惧される声が多くありました。
Atlasのミュート機能でグラス内の映像を消したり、バイザーを跳ね上げることで映像を見えにくくすることもできますが、多くの現場では映像を消すことはせず グラス内にスマートグラス自身のカメラ映像を表示して 立会に臨まれてれています。
あえて映像を表示し カメラ映像越しに視界を確保することで、周囲を確認し安全に立会が実施するよう工夫されています。
※とはいえ、グラスを掛けた作業者さんを数名でフォローしながら立会に臨まれたりと、安全には十分注意されております。
※また、現場内を移動中等はグラスを外されたりと、安全には十分注意されております。
工事現場は危険な場所もありますが、移動時などでも映像を見ながら確認できます。
相手に見えている映像が作業者自身で確認できる
また、グラス内にスマートグラス自身のカメラ映像を表示することで、遠隔で立会される発注者さんにきちんと映像を見せれているか? 確認できます。
単眼タイプやヘルメットカメラの場合、現場の作業者さんが自身が掛けているスマートグラスのカメラがどこを映しているかを把握しづらいため、現場では顔を向けてスケールの値を映しているつもりでも、 遠隔では見えていない といったことが多々あり、『もう少し左』や『近づいて』といった声でのやり取りが発生してしまいます。
そういったやり取りが多いと手間取ることになってしまい、これでは 立会時間が長くなるだけでなく遠隔での立会そのものにストレスを感じることもあります。
両眼タイプでAtlasを利用すると、自身が掛けているスマートグラスのカメラ映像を現場の作業者さん自身が確認することができるため、発注者さんに ”見せたい場所が見せれていない” ということがなくなり、遠隔での立会がスムーズに実施できます。
発注者さんに確認してもらいたい箇所がカメラで捉えられているか、自身の映像で確認しながら立ち合いができます。
アップデート情報
通信開始時にグラス内に表示される映像が、「相手のカメラ映像」から始まるようになっていましたが、「相手のカメラ映像」か「自身のカメラ映像」か選択出来るようにアップデートしました。
Atlasを利用することのメリット
外付けUSBカメラで接写もできる
Atlasは一部機種(Moverio)で、外付けUSBカメラを利用することができます。
グラスカメラやヘルメットカメラは頭部に装着するため、スケールの値といった ”映したい箇所” にグラスを掛けている作業者さん自身が近づかないと、遠隔の発注者さんに映像を見せることができませんでした。
Atlasは外付けのカメラをスマートグラスに接続することで、スケールの値といった “映したい箇所” に、手持ちのカメラを近づけるだけで、遠隔の発注者さんに映像を見せることができます。
スケールの目盛りも確認できます!
スマートグラス自身の映像を確認することができる
スマートグラスを利用するメリットで記載しましたが、Atlasはスマートグラス自身のカメラ映像をグラス内に表示することができます。
外付けUSBカメラの映像もグラス内に表示することができます。
グラスカメラの映像を双方で共有できているため、もう少し左、もう少し右といった伝達が少なくなりスムーズに立ち合いができます。
現場の声や発注者の声を活かしたシステムアップデート
実際の現場で頂いた貴重な声をお聞きし、出来ることを出来るだけ早く取り組んでおります。
外付けUSBカメラとスマートグラスカメラの映像切換を指示者側でできるようになりました
外付けUSBカメラ映像への切換はグラス側で行うようにしていました。指示者が外付けカメラの映像で確認したい場合、作業者に音声でカメラを切り替えるよう指示する必要がありました。
遠隔地の指示者側からもボタン1つで切り替えることができるようになりました。
細かい箇所を確認したい時に自分でカメラを切り替えることができ、立ち合いがよりスムーズに行えるようになりました。
録画中に録画時間を表示するようにしました
遠隔臨場では発注者さん側が補助監督員の場合は映像を記録する必要があります。記録した映像は必要に応じて編集して保存することになりますが、動画の必要な部分を編集する際にビデオを全て見ながら編集する必要がありました。
Atlasも録画してもらっていましたが、動画編集時の編集点が事前にわかるとよいというお話がありました。
録画機能実行時に、録画開始からの時間を画面に表示することで、必要な動画部分が予めわかるようになりました。
施工管理の資料として動画の編集点がわかりやすいです。
グラス側からの指示で録画が実行できるようになりました
現場によっては、受注者側である現場の作業者さんが任意のタイミングで録画して映像を保存しておきたいという声がありました。
グラス側に録画ボタンを設けることで、作業者さんが必要に応じてPCへの録画機能を実行することができるようになりました。
現場のタイミングで録画することができます。
立ち会ってわかった現場での工夫
スマートグラスの熱対策
2020年の夏も例外なく暑かったです。8月に現場に行きましたが、炎天下で温度計は40℃近くを指していました。
そういった過酷な状況はスマートグラスといった精密機器には厳しく、使っていると本体は熱くなり次第に通信にも影響を及ぼし、最終的には通信が出来なくなってしまいます。
現場では、Moverioのコントローラ部分の作業着のポケットではなく通気性の良いポーチに入れたり、ウェアラブル端末用の冷却シートを使ったり、コントローラの周りの空間を保冷剤で冷やしたりといった工夫をなされていました。
※この体験から、バッテリーや本体自身が直接外に出ている単眼タイプのグラスやヘルメットカメラよりも、Moverioのようなコントローラが別にあるタイプのほうが案外よいのかもしれません。
※コントローラに直接保冷剤を付けることはNGです!
カメラの映像酔い対策
遠隔で繋いだままグラスを掛けた作業者さんが移動すると、カメラが揺れることで映像を見ている指示者側は酔ったような感覚になります。
遠隔立会中、現場の作業者さんは移動される際にカメラを指で塞いて映像が揺れないよう工夫されていました。
※指示者機能で通信中のカメラからの映像を一度隠すといった機能を追加出来ればと考えております。
アップデート情報
指示者機能で、「相手のカメラ映像」を一時的にミュート出来るようにアップデートしました。
利用する通信キャリアを予めいくつか準備する
導入頂いているお客様には、海岸沿いや山奥といった現場もあります。
そういった現場では電波の弱い地域や場所もあり、映像の乱れや通信が切断されるといったことも多々ありました。
現場でいくつか通信キャリアを用意して通信テストしたところ、キャリアさんによって鮮明だったり、乱れがあるといったことが確認できました。
通信キャリアによって、現場に適合する、しない、があるのだと実感できました。
ワンポイントアドバイス
利用する場所によって、通信キャリアの選択も検討してください。
通信機器同士を1つのポケットに入れておかない
とある現場では、モバイルWi-Fiルータとスマートフォンを1つのポケットに入れておくと、通信状況が悪いといったこともありました。
通信機器をなるべく一緒で持ち歩かないことで、通信が改善されることもあるかもしれません。
Atlasの遠隔支援はスマートフォンでも利用できます。
片手は塞がることになりますが、Atlasのスマートフォン用のアプリを利用して、遠隔臨場を行って頂いている現場もあります。
スマートフォンの良い面を活用
スマートフォンであれば、手を近づけることでアップした映像を伝えることもできます。手ブレ補正機能や、オートフォーカス機能が付いている機種であれば、その機能を活かした映像を配信できることができます。
ワンポイントアドバイス
スマートフォン用のスタビライザーを利用することで、スマートフォンのカメラ映像がより滑らかに配信できます。